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書評「津波と原発」

 佐野真一というノンフィクション作家に以前から興味を持っていた。その人がルポした「津波と原発」。相当、高い期待を持って読み始めたが、まさにその期待を裏切らない1冊だった。

 最近でこそ原発関連で働いた人たちの声もマスコミに取り上げられるようになったが、昨年は「国が悪い」「東電が悪い」という「権力への反抗」的な一方的論調が多く、違和感を覚えていた。

 本書は、佐野氏がノンフィクション作家として、とにかく現場という現場を訪ね歩き、いろんな立場の人の声を拾ったもので、非常に考えさせられた。

 後半は、もともと彼の過去の作品で書かれたという正力松太郎と原発との関係、福島第一原発がある地域のかつての貧しさと原発立地後の繁栄、堤家による原発用地の転売など、原発が、まさに、政治、権力そして人間の欲望そのものであったことが描かれている。

 一般の日本人は皆、今もそうだと思うが、明るい夜を演出してきた「原発」の影の部分について、あえて目をつぶってきた。今、悪い意味で「原発」は注目されているが、その周辺にある「人間」に目をやり続けられるかどうかが日本の今後を左右するように思う。

「津波と原発」佐野真一、講談社、2011年

書評「チェ・ゲバラの遥かな旅」

 9年前、キューバのハバナに行ったとき、チェ・ゲバラの巨大な壁画を見た。

 キューバ革命をフィデル・カストロとともに成し遂げ、その後、ボリビアのゲリラ戦に参加して戦死。そんなゲバラってどんな人だったのだろう。ずっと興味を持っていた。

 意外にも喘息に悩まされ、身体が弱かった少年時代。それでもバイクで南米を旅し、身体も鍛え、やがて南米解放を志すようになる。

 そしてフィデルとの出会い。フィデルの片腕としてゲリラ戦に参加し、徐々に民衆の支援を得て革命を成功させる。当初は工業化を目指そうとするが、米国とソ連の間に挟まれ、ソ連圏の一環とならざるを得なかった苦悩。

 やがて、新たな革命を目指してボリビアへ。ボリビアの中での異国人としての苦しみ、キューバとの違い。拘束。死。

 このようなストイックとも言える人生の中で、母親への手紙や恋愛など、普通の人間くさい一面も書かれ、親近感を感じつつ、非常におもしろく読めた。今度はフィデルの伝記(?)も読んでみたい。

「チェ・ゲバラの遥かな旅」戸井十月、集英社文庫

書評「官僚の責任」

 著者の古賀氏は、最近、TV等でもよく目にし、官僚、政策批判を繰り広げ、あまりにも有名人になっているので、「今更、著書を読むのも。。」と思っていたが、会社の人からいただいたので読んでみた。

 元経産官僚だけあって、さすがに関連政策への意見は筋が通っている。さらに財政悪化の大きな責任も官僚にあり、そのベースに省益を優先せざるを得ないメカニズムがある。それを変え、国民のために働くインセンティブを付けるための公務員制度改革が重要だ、という著者の主張も頷ける。

 それを実行しようとしたのが安倍内閣であり、渡辺喜美大臣であったことは、僕も知っていたが、当時、著者が審議官に抜擢されていたとは初耳だった。また民主党内閣の元で、とかく悪く言われがちな長妻元厚労大臣がその線での改革をやろうとしていたことは意外だった。

 しかし、こういう方の多くが役所を途中で辞めてしまわざるを得ないのは残念だ。政治の波に左右されているところが多分にあり、われわれ有権者にも大きな責任がある。

「官僚の責任」PHP新書、2011.7

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