書評「津波と原発」
佐野真一というノンフィクション作家に以前から興味を持っていた。その人がルポした「津波と原発」。相当、高い期待を持って読み始めたが、まさにその期待を裏切らない1冊だった。
最近でこそ原発関連で働いた人たちの声もマスコミに取り上げられるようになったが、昨年は「国が悪い」「東電が悪い」という「権力への反抗」的な一方的論調が多く、違和感を覚えていた。
本書は、佐野氏がノンフィクション作家として、とにかく現場という現場を訪ね歩き、いろんな立場の人の声を拾ったもので、非常に考えさせられた。
後半は、もともと彼の過去の作品で書かれたという正力松太郎と原発との関係、福島第一原発がある地域のかつての貧しさと原発立地後の繁栄、堤家による原発用地の転売など、原発が、まさに、政治、権力そして人間の欲望そのものであったことが描かれている。
一般の日本人は皆、今もそうだと思うが、明るい夜を演出してきた「原発」の影の部分について、あえて目をつぶってきた。今、悪い意味で「原発」は注目されているが、その周辺にある「人間」に目をやり続けられるかどうかが日本の今後を左右するように思う。
「津波と原発」佐野真一、講談社、2011年


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